早大と明大に入部した新入生。彼らは春の早明戦の前哨戦として、そして現在のライバルとの差を確かめるために、毎年この時期に新人早明戦に臨む。夏を思わせる日差しが照り付けた上井草グラウンドには早明の新人たちの熱いプレーを見届けにやってきた多くのラグビーファンが集まった。
試合開始直後から早大にトライが生まれると、続く12分、33分にも追加点。前半終了間際にスクラムから失点を許すものの、19-7とリードを保ち、前半を折り返す。
後半は立ち上がりに明大から連続2トライを奪われ、同点に追いつかれる。しかし、早大は集中を切らさず走り続け、最後まで明大にリードを許さない。早明戦らしい僅差の展開となった今試合は33-24で早大に軍配が上がった。
早大のキックオフから始まった新人早明戦。1分、FL牧錬太郎(スポ1=神奈川・桐蔭学園) がラインアウトからの攻撃で力強いゲインを見せると、両チームのコンタクトは熱を帯びる。前掛かりになった明大ディフェンスを見逃さなかったSO島田隼成(スポ1=福岡・修猷館/Mt Albert Grammar School (NZ)) が長めのキックを蹴り、明大の後逸を誘う。その瞬間、落下地点の目前にまで走りこんでいたWTB山下恵士朗(スポ1=早稲田佐賀) がボールを拾い、そのままグラウンディング。前半2分に鮮烈なトライを見せた。6分に迎えたファーストスクラムは明大のペナルティー。セットプレーでも優勢に立ち、早くも再び明大ゴール前まで侵入することに成功したが、ここで形成したラインアウトモールで痛恨の反則を犯してしまう。一気に陣地を引き戻されてしまったが12分、ハーフライン付近で獲得したラインアウトからテンポの良いアタックを繰り広げた早大。二次攻撃で島田が目線で仕掛けたことでわずかに生まれた明大ディフェンスの綻びを見逃さなかったのはFB植木太一(人1=神奈川・関東学院六浦)。スピードをつけながらボールを受け取り、インゴールまで走り切った。スコアを12-0とし、幸先よくリードを広げる。
16分、早大のオーバーザトップの反則から明大に大きく前進を許す。さらにここで2つのペナルティーを重ねてしまい、早大はゴール前での攻防を余儀なくされる。しかし10フェーズを超える明大の猛攻を規律あるディフェンスでしのぎ切ると、観客席からは歓声が上がった。続く23分にも早大ゴール前での攻防となったが、出足の良いディフェンスで再び明大のミスを誘った。「試合の最初から声が出ていて、ディフェンスのコミュニケーションもしっかりできていた」と牧が語るように、早大は組織ディフェンスで明大のゲインを許さず、トライラインを割らせない。33分には明大のアタックミスからこぼれたボールを山下が拾うと、早いテンポで逆サイドまで展開。WTB西浦岳優(社1=東福岡) がステップでディフェンスをかわしてゲインすると明大陣地の22メートルラインを突破。続くフェーズでNo.8城央祐(スポ1=神奈川・桐蔭学園) がダブルタックルをものともしない前進を見せ、インゴール目前まで来ると、SH渡邊晃樹(スポ1=神奈川・桐蔭学園) が早いテンポで牧にパスを出し、トライ。19-0とさらにリードを広げたが、40分の前半ラストプレーの明大のスクラム一次攻撃でブレイクを許し、ついに失点してしまう。
19-7と12点のリードを維持し、前半を折り返す。
後半の立ち上がりは明大が優勢。早大は果敢に攻撃を仕掛けたが跳ね返されてしまう。10分、自陣10メートルライン上で明大にラインアウトを献上すると、一次攻撃のサインプレーで突破されそのまま失点。さらに再開のキックオフをキャッチした明大は狭いサイドを効果的に使い、スピードに乗ったBKがブレイク。60メートル余りを走り切られ、ついに同点に追いつかれてしまう。
このまま明大に主導権を握られてしまうかに思われたが16分、PR杉村利朗(社1=東福岡)が9シェイプのアタックで華麗なバックフリップパスを見せると、それを受け取ったHO田中健心(スポ1=神奈川・桐蔭学園)が中央にグラウンディング。26-19と再びリードを得た。20分から中盤での激しいボールの奪い合いが続き、一つのミスが失点につながるような緊張感のある試合展開に。24分、明大は着実にフェーズを重ねて前進を繰り返すと、早大ディフェンスの崩れを的確に突き、追加点を挙げた。26-24と2点差にまで詰め寄られ、試合はいよいよ最終局面へ。30分、明大はセンタースクラムを左に展開。CTBの位置でアタックミスを犯すと、植木が一気にギアチェンジ。ボールを奪い取り、そのまま70メートルを走り切った。33-24と再び明大を突き放す。37分には両FLの久我真之介(文構1=東京・早実) 、龍康之助(文構1=東京・早大学院) のナイスタックルで明大のオフフィートを誘うと、早大の選手たちはガッツポーズで感情をあらわにする。早大と明大、両チームの新人選手たちの誇りがぶつかり合った最後のプレーは田中(健心)のジャッカル。「ここしかない」(田中健心)と抜群の嗅覚を見せ、ノーサイドの笛が鳴った。
33-24と、新人早明戦は早大が9点差で白星を挙げた。
「相手には高校日本代表も多くいたが、それでも勝ち切ることができた。自分たちの自力、底力を見せることができた」とゲームキャプテンの城は試合後に笑顔を見せた。強力な明大のフレッシュマンにも勝利し、の意地を見せた早大の新人たち。
佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)が掲げた『春シーズン全勝』、そして『Beat Up』のバトンは繋がれた。
記事:村上結太 写真:西川龍佑(早稲田スポーツ新聞会)