気炎万丈。勝利に飢え、優勝に飢えた早大の炎は紫紺を飲み込み、2007年以来の全勝優勝を達成した。今季の対抗戦で最も肉薄した試合であったことは間違いないが、重戦車の猛攻を自慢のディフェンスで抑え込んだ。前半は自陣での反則が重なり、苦しい展開が続くが何とか無失点のまま乗り越える。12分に得た初めてのチャンスから先制に成功すると、両チーム、トライを取り合い、12-10と2点のリードで前半を終えた。後半、明大に逆転を許すものの崩れることはなく、2連続トライで再逆転。試合終盤に明大の執念のアタックで最大のピンチを迎えるが、規律正しく、圧力のある決死のディフェンスでインゴールを守り切り、27-24と見ごたえのあるクロスゲームを制して見せた。
明大ボールのキックオフから100回目の早明戦が始まった。細かなミスが失点につながるような異様な緊張感の中、先に流れを掴んだのは明大。早大は自陣での反則が重なり、自陣深くでのプレーが続く。しかし、「冬から取り組んできた」(大田尾竜彦監督、平16人卒=佐賀工)ディフェンスでグラウンディングを許さず、無失点で立ち上がりの危機を乗り越えた。11分、明大のダイレクトタッチから敵陣でのラインアウトを獲得し、今試合初の好機を迎えた。CTB福島秀法(スポ3=福岡・修猷館)がラインブレイクすると、フォローに走っていたFB矢崎由高(スポ2=神奈川・桐蔭学園)がゴール目前にまで迫る。早いテンポでSH細矢聖樹(スポ4=國學院栃木)がボールを捌くと、LO米倉翔(スポ2=福岡・修猷館)が巧みなカットインでさらにゲインを見せる。最後は大外で待っていたHO佐藤健次主将(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がインゴールを叩き割った。瞬く間の速攻で一気に明大守備を破壊し、先制点をもぎ取った。しかし続く16分、早大のオブストラクションからゴール前でのラインアウトモールを形成した明大に伝統の重戦車ぶりを見せつけられ、同点に追いつかれる。さらに27分、またもモールでトライラインを割られ、逆転を許した。5-10とロースコアな展開で前半の終盤を迎えると、WTB田中健想(社1=神奈川・桐蔭学園)が獲得したハイタックルのペナルティーから早大はチャンスを得る。インターセプトを狙ったCTB平翔太のノックオンからゴール前でマイボールのスクラムを組むと、サインプレーでインゴールに飛び込んだのは田中(健)。対抗戦14本目のトライを挙げ、12-10と2点のリードを得て前半の40分を終えた。
続く後半。先に試合を動かしたのは明大。10分、早大のラインアウトの反則から陣地を大きく拡大した明大はモールでアドバンテージを得ると、CTB秋濱悠太がディフェンスの穴を突く見事なランニングを見せ、12-17とまたも逆転。しかし、再開後すぐのキック合戦で明大がブレイクダウンでの反則を犯すと、早大はラインアウトモールを押し込み、同点に追いついた。さらに18分、佐藤が逆足でのグラバーキックで明大ゴール前の絶妙な位置にボールを転がすと、WTB池本晴人(社2=東京・早実)のナイスセービングでボールをキープした早大。最後はディフェンスラインめがけて鋭く走りこんできた矢崎がタックラーを引きずりながらインゴールをこじ開け、値千金の連続トライ。点差を広げると、ペナルティーゴールでスコアを27-17とし、流れに乗ったかに見えた。しかし、最後まで勝負がわからないのが早明戦の醍醐味。30分、明大SO伊藤龍之介のラインブレイクから会場が明大コールに包まれると、モールからFWの継続したアタックでトライを奪われてしまい、残り8分で3点差に。38分に早大はスクラムで痛恨のアーリーエンゲージの反則を取られ、今試合最大のピンチを迎える。今試合2トライを奪われている強力なモールを組まれるが、前進を許さない。明大の猛攻は続くが、試合終盤になっても早大の出足が遅れることはなかった。特にリザーブから出場したPR新井瑛大(教2=大阪桐蔭)、PR安恒直人(スポ4=福岡)、HO清水健伸(スポ2=東京・國學院久我山)が意地のタックルで早大ディフェンスを牽引。「1トライで逆転されてしまうという場面を楽しめていた」(佐藤)と、苦しい場面でも焦りは見せなかった早大。ライン際まで回ったボールはWTB海老澤琥珀が受け取り、最終局面。紫紺のトライゲッターを1年生コンビ、SO服部亮太(スポ1=佐賀工)とWTB田中(健)がタッチに押し出し、ノーサイド。3点差を守り切り、対抗戦全勝優勝を決めた。
佐藤主将のもと、『Beat Up』というスローガンを掲げて走り続けてきた早大。開幕節立教大戦で57-6と圧倒し、続く日体大、青山学院大を完封。絶対王者・帝京大を相手に31点差での歴史的勝利を遂げると、筑波大も危なげなく快勝。伝統の早慶戦では慶大をノートライに抑え、ついに宿敵・明大を撃破。「全カテゴリーの選手たちが勝負に貪欲になって勝ちだけを目指してきたからこそ今日の勝利を掴めた。チーム全体として勝ち癖のある良い集団になれている」と佐藤が振り返ったように、常勝軍団として快進撃を見せてきた。節目となる第100回の早明戦、タフな試合で勝利し、さらに勢いをつけた早大。次なる戦いの場はついに全国大学選手権だ。負けたら終わりのノックアウトステージ、勝って、凱歌を響かせよう。日本一になったときにしか歌えない『あの歌』を。
記事:村上結太 写真:安藤香穂、植村皓大(早稲田スポーツ新聞会)