『打倒明治』。早稲田ラグビーとこの言葉は切っても切り離せない繋がりがある。『ヨコの早稲田、タテの明治』というフレーズに代表されるように、両チームは常に比較される運命。関東大学対抗戦で毎年12月の第一日曜日に早明戦が開催され、大学ラグビー界全体を盛り上げる大一番として早大は宿敵・明大と幾度もの勝負を繰り広げてきた。しかし、明大との戦いはこれだけではない。春にはルーキーたちが熱戦を繰り広げる新人早明戦があり、そして冬にはこの一戦がある。これまでの成長とプライドをぶつけ合う4年早明戦だ。風が吹き、西日が差し込む明大・八幡山グラウンドには多くのファンが駆け付け、4年生の雄姿を見届けた。試合開始早々から激しいコンタクトの応酬が続き、会場全体が熱気を帯びる。早大はスクラムで組み勝ち、流れを掴むと先制に成功した。しかし、明大の徹底的にFWを当て続ける愚直なプレーに苦戦を強いられ、すぐに1トライを返される。前半はトライを奪い合うシーソーゲームとなり、12-29と明大がリードして折り返した。続く後半は明大に立ち上がりで連続トライを奪われ、点差は31点差に。2本トライを返すが明大の勢いは衰えることなく、26-57でノーサイド。最上級生の意地のぶつかり合いは明大に軍配が上がった。
早大のキックオフで始まったこの試合。ファーストプレーでNo.8松永拓実(スポ4=埼玉・県浦和)が強烈なタックルを見せると早大はどんどんとディフェンスで襲い掛かる。明大を自陣深くに押し込み、獲得したマイボールスクラムから継続したアタックを見せた早大。5分、FL永井新之助(スポ4=東京・早実)の力強いゲインをきっかけに攻撃が加速し、最後は右サイドで丁寧にパスを繋いでWTB杉野駿太(政経4=東京・早大学院)がインゴールを駆け抜けた。しかし続く8分にはペナルティーから明大FWに前進を許し、トライラインを明け渡してしまう。序盤からハードな肉弾戦が続くが、まったく疲労を見せない両チーム。出し惜しみなく戦い抜く覚悟がみえた。13分、敵陣左サイドのマイボールスクラムで早大は一気にプッシュし、コラプシングの反則を獲得。PR門脇浩志(スポ4=神奈川・桐蔭学園)が感情を爆発させてチームを鼓舞した。この流れのまま敵陣でのプレーを続けると、HO佐々木柊(スポ4=東京・本郷)のゲインを皮切りに早いテンポでボールを展開した早大。左サイドで永井が大きく前進すると、守備が手薄になった逆サイド目掛けてSO吉岡麟太朗(スポ4=東京・本郷)がキックパス。タッチライン際で待っていた杉野がキャッチしながらタックラーをかわしてインゴールに飛び込み、12-5と7点のリードを得た。しかしここから早大はブレイクダウンでの反則が重なると同時に重戦車の前進に苦戦し、28分、33分、35分に連続トライを許してしまい、12-29で前半の40分を終えた。
続く後半、キックオフの再獲得に成功した明大にそのままインゴールまで雪崩れ込まれ、ノーホイッスルトライを許してしまう。6分には早大のオフサイドの反則から自陣ゴール前まで侵入を許し、追加点を奪われる。12-43と点差は31にまで広がった。しかし13分、途中出場のWTB溝井颯太朗(スポ4=北海道・函館ラサール)がラインアウトの一次攻撃から敵陣に入り込むと、早大は反撃に転じる。10シェイプのアタックで松永がディフェンスの裏を取ると、オフロードパスをキャッチしたFL谷司馬人(教3=東京・早実)が4年生の力強いハンマーを受けながらゴール前まで前進。最後はLO折戸健介(法4=東京・早実)がインゴール左隅にグラウンディングした。CTB守屋大誠(政経4=東京・早実)が風も吹く中、難しい角度のキックを沈めてスコアは19-43となった。22分にはインターセプトから明大にリードを広げられるものの、再開後すぐのプレーでペナルティーを得る。敵陣深い位置でのラインアウトからLO廣川凜太朗(スポ4=北海道・函館ラサール) が中央にラックを形成。順目に大きく回ってきた佐々木が執念のドライブでインゴールにねじ込んだ。続く31分にはCTB米重皓己(商4=北海道・函館ラサール)のナイスタックルから明大のアタックミスを誘い、流れを引き寄せたかに見えた。しかし、直後のスクラムでコラプシングの反則を奪われ、そのまま失点。39分、早大は敵陣での攻撃チャンスでフェーズを重ねて意地のアタックを見せるものの、明大の鉄壁を前にインゴールまで到達することができず、ノーサイドの笛が鳴った。最終スコアは26-57で伝統の4年早明戦は幕を閉じた。
序盤から強烈なコンタクトと勢いのあるスクラムで明大を押し込み、先制に成功した早大。宿敵を相手に何度も早稲田らしいアタックを見せ、ノーサイドの笛が鳴るまで全力で戦い抜いた。しかし明大のコリジョンに一歩及ばす、勝利を掴み取ることはできなかった。でも「まだ終わりじゃない」。インタビューに答えた4年生は口を揃えて語った。早大ラグビー部で鍛え、苦しみ、戦い、そして成長してきた4年間が証明されるのは『荒ぶる』を歌う時だ。1月13日、全国大学選手権決勝の舞台で勝利し、全員で『荒ぶる』を歌うまで、彼らのシーズンは終わらない。
記事:村上結太 写真:濵嶋彩加、安藤香穂(早稲田スポーツ新聞会)