寒空が広がる秩父宮ラグビー場。チーム佐藤は全国大学選手権の初戦となる準々決勝に臨んだ。対戦相手は近大。関西大学ラグビーAリーグを3位で通過した西の強豪との一戦は、早大が自力を見せつける展開となった。開始早々の先制から3本連続でトライを奪った早大。近大の激しい圧力で流れに乗り切れない時間もあったものの、終了間際にトライを追加し19点リードで前半を折り返す。後半もこう着状態が続く中で得点を重ねリードを広げる。ディフェンスの圧力も加速し、終始リードを保った早大が、53-10で白星を挙げた。
試合開始早々、早大は敵陣深くでペナルティーを獲得する。ゴール前ラインアウトからモールを形成すると、勢いよく押し込みHO佐藤健次(スポ4=神奈川・桐蔭学園)がグラウンディング。幸先よく先制に成功した。しかし直後のリスタートからは近大に攻め込まれる。自陣ゴール前のラインアウトからロングスローのスペシャルサインでインゴールに迫られるも、このピンチを間一髪で凌いだ早大は、中盤からミスのない攻撃を継続し近大のペナルティーを誘う。再び敵陣ゴール前でラインアウトのチャンスを得た。モールを止められるもボールを展開しフェーズを重ねると、最後はSO服部亮太(スポ1=佐賀工)、CTB野中健吾(スポ3=東海大大阪仰星)と繋ぎ、走り込んだFB植木太一(人1=神奈川・関東学院六浦)がインゴールを走り抜けた。さらに15分にはモールを10メートル押し切り再び佐藤がトライ。連続得点で17-0とリードを大きく広げた。完全にペースをつかんだかに思われた早大だったが、その後はこう着した展開が続く。向かい風の影響や、FWもスクラムで連続してペナルティーを取られるなど、エリアマネジメントで苦戦を強いられる。我慢の時間が続いた32分、早大がスクラムで反則を犯すと、近大が素早くリスタート。大外で待つWTB植田和磨にボールがわたり、そのままインゴールに飛び込んだ。その後もピンチの場面が続き前半は終了間際を迎える。流れに乗る近大のアタックラインが早大陣地に襲いかかる中、巧みなパス回しが乱れた一瞬の隙を見逃さなかったのは早大のWTB田中健想(社1=神奈川・桐蔭学園)。インターセプトに成功すると、そのまま50メートルを走りきり前半を締め括るトライを挙げた。スコアを24-5とし、試合を折り返した。
後半に入ると早大が少しずつペースをつかみ始める。後半4分と8分のスクラムでは近大の反則を誘い、前半からの悪い流れを断ち切る修正力を見せた。早大が敵陣で攻撃を展開するシーンが増えた12分、連続アタックで近大ディフェンスを崩すとCTB福島秀法(スポ3=福岡・修猷館)が勢いよくディフェンスへ突進。LO西浦剛臣(社4=ニュージーランド・ハミルトン・ボーイズ・ハイスクール)へオフロードパスを繋ぎ、ライン際の田中(健)に渡ってゴールラインを割った。続く16分には野中がペナルティーゴールを沈め3点を追加。さらに23分にはラインアウトからのフェーズアタックでSH宮尾がブラインドサイドに仕掛ける。それに反応したPR安恒がショートパスを受けるとディフェンスを引き剥がしてゴールラインを駆け抜けた。26分にトライを許すも、すかさず29分に服部の華麗なバックフリップパスから佐藤がこの日3本目のトライを奪い、スコアは46-10に。最終盤には近大ゴール前で両者の意地がぶつかり合うスクラムが続き、近大が執念のディフェンスを見せマイボールラインアウトに持ち込んだラストワンプレー。展開を試みるもパスが乱れ、こぼれ球に反応したFL田中勇成(教3=東京・早実)のグラウンディングで早大がダメ押しとなるトライを挙げた。53-10と大学選手権の初戦を快勝で終えた。
大差で近大を下し準決勝に駒を進めたチーム佐藤。無事『年越し』を決めた早大が次戦でぶつかるのは、京産大だ。大型の外国人選手を擁するパワー型のチーム。強靭なフィジカルに対し、堅いディフェンスと安定したセットプレーでペースを渡さないことが必要とされる相手だ。今試合では関西チームが持つ圧力のあるスクラムに苦戦を強いられた。次戦に向けて「ひとつひとつの精度」、「厳しさ」(佐藤)にこだわって、ラストスパートをかけていきたい。絶対に負けられない戦いが続くラストシーズン。多くの思いを背負った赤黒のジャージーは、深まる季節に逆らうように、さらなる熱を帯びていく。
記事:西川龍佑 写真:安藤香穂、髙木颯人(早稲田スポーツ新聞会)